「DNA誕生の謎に迫る」

  竹村正春  サイエンス・アイ新書  平成22

 遺伝情報というのは、DNAという物質によって伝達されるらしいのです。そういうことが発見されたのは1953年、今から五十年以上も前です。見つけたのは30代のアメリカの二人の科学者です。その骨子は、DNAというのは長く連なった紐のような物質で、それには四文字の記号が延々と書き綴られていること。それが2本ペアになり、らせん状になっていること、というものです。その、一つ一つは、燐酸と糖(リボース)、それに塩基という部分から成り、塩基の部分がA(アデニン)、G(グアニン)、C(シトシン)、T(チミン)という四種類があるのだそうです。燐酸と、糖の部分はどうやら、物質を長く繋ぐ役目だけのようで情報は四つの塩基が分担しているようです。しかもペアになっている、二本の紐は相補的であり、どうやら刀と鞘というような関係のようです。つまりどちらかに欠陥があっても、もう一方が健全であれば修復できるということになっているようです。

 この本は、どうして生物はこのような構造のDNAを持つようになったか、ということについてグダグダと説明をしています。まあ、門外漢である私にはさっぱりといってよいほど分からないことが書いてありました。それでも何となく分かったような気になったことは、

   遺伝子をDNAでなく、RNAの形で持っているものがある。それは生物といえるかどうか分からないような、ウイルスというものです。RNAはDNAと殆ど同じ構造らしいのですが、DNAと違って糖の部分に-OHという枝を持っている。そのOがあるためにこの構造は非常に不安定だと。してみるとインフルエンザウィルスが、どんどん変化を繰り返して、恐ろしいものになるということもうなずけます。そのOが取れてしまったのが、ディオキシ(つまり酸素が取れたということ)リボ核酸、DNAです。Oを失ったおかげで、遺伝物質はきわめて安定的に成りました。そういう、安定な物質でなければ、とても高等な生物への進化はなかったでしょう。不安定な砂のお城では、奇抜なものも出来やすいが、複雑な構造は望むべくもないということでしょう。そのほかにも、RNAでは塩基がひとつDNAと違っているようです。

   もうひとつは、RNAは殆どが二重螺旋の構造になっていないということ。つまり、二重螺旋を獲得したことは、DNAがさらに安定度を増したということです。これも、生物の高等化に寄与しているのでしょう。

 

 考えてみると、安定的ということは進化しない、現状を堅く維持するということです。それにもかかわらず、40億年という時間はここまで生物を進化させました。進化というのは価値的な言い回しで、本当は変化なのでしょう。変化の原因は宇宙線や放射能、紫外線など或いは化学物質などかも知れません。でも、こういう自然からのアタックは、たいていは破壊的な効果をもたらすもので、建設的な進化につながるものは、ごく稀であったと思われます。それでもそんな稀な変化を、少しずつ繰り返すことによって、まさに神業のような進化をもたらしたのでしょう。進化の陰にはその何億倍の失敗作があったのでしょう。そういう苦難をくぐりぬけて、今こうして居られることは不思議というほかはありません。