「孤舟」

  渡辺淳一  集英社  平成221116

 長いことサラリーマン生活を続けたものにとって、退職後の生活のリズムをつかむことは、大きな課題であろう。特に、会社への寄りかかり方が大きかった者にとっては大問題である。そして、老齢化時代の今日、そのフリーな時間は20年以上も続くのである。現に、もうすぐ70歳に手が届きそうなわが世代、リタイアした何人かの友人はウツ状態にあるとようである。フリーといえば肯定的な響きがあるが、実は何にもすることがない、或いは何をして良いのか分からないような状態なのである。そして彼は、世間から何も期待されていなくて、何にも出来ないただの爺さんだったことに気が付くのである。

 この本は、そんな話。大手広告会社の、役員寸前でフリーになった男の物語。さあ自分の時間がいっぱいあるぞとはりきってみたものの、何にも出来ない。世間の人は見向きもしてくれないのである。今まで社会から自分が必要とされていたような錯覚はなんだったのか。世の中の人は会社の中のポストに敬意を払ってくれていただけなのだということに気が付きます。妻の気を引こうといろいろ手を出しますが、やることなすことみんな裏目に出てしまい、挙句の果て妻と娘は出て行きます。犬と一緒に残された主人公は、デートクラブをのぞいてみますが、これもどうも歯車があわない。

 世のおじ様方、何とか第二の青春を楽しもうではありませんか。